2013
10/28

「社長失格」20億円以上の融資を受けて倒産した会社の物語

1998年に発行された「社長失格」。1998年といえば僕はまだ中学生。同年代の2006年入社世代は読んでいない方も多いのではないでしょうか。

今、読んでも凄いおもしろいですし、今だからこそまた価値が上がってきたようにも思えます。

物語の中心となる株式会社ハイパーネットの年表を引用させて頂きます。

1991年 6月 資本金1760万円で株式会社ハイパーネットを設立
1992年 3月期決算 売上高1億5200万円 経常損益▲2800万円
4月 ハイパーダイヤル サービス開始
1993年 1月 新サービス、IMSの初受注
3月期決算 売上高4900万円 経常損益▲1億6000万円
1994年 3月期決算 売上高5400万円 経常損益▲1700万円
11月 日本合同ファイナンス(JAFCO)の出資決定
1995年 3月期決算 売上高1億6300万円 経常損益400万円
9月 ハイパーシステム事業の構想を思いつく
11月 住友銀行が2億5000万円を融資 その後1年で7銀行から約20億円の融資が集まる
12月 ハイパーシステムの開発チーム発足
1996年 2月 アスキーとプロバイダー契約を結ぶ
六本木ベルファーレでハイパーシステムの発表会
3月期決算 売上高7億700万円 経常損益1億9400万円
4月 ハイパーシステム テストサービス開始
ソロモンブラザーズからナスダック公開の提案 野村証券も話に乗る
6月 ハイパーシステム正式稼働
10月 ニュービジネス大賞受賞
12月 マイクロソフトのビル・ゲイツ会長と東京で会談
米国でハイパーシステムのサービス稼働
1997年 1月 韓国三ツ星グループとライセンス契約
2月 日本長期信用銀行系のNEDなどの力で6億円の第三者割当増資を達成
3月 取引7銀行の要請にしたがって、総額6億円を超す融資をいったん返済
3月期決算 売上高7億8500万円 経常損益▲9億8400万円
4月 7銀行からの折り返し融資を受けられず、いわゆる「貸し渋り」に会う
5月 東食の子会社、東食ファイナンスに3億円の私募債を引き受けてもらう
6月 韓国でハイパーネットコーリアのサービス稼働
8月 各銀行から融資返済攻勢が始まる
加ト吉から1億円を融資してもらう
9月 社員の給与遅配
10月 日本リースなどリース会社からの資材回収攻勢始まる
各取引銀行も融資の全面回収報告に
2回目の給与遅配
11月 法律事務所に会社の処理を相談。自己破産することに決定。
12月2日 東京地方裁判所に自己破産を申請
12月24日 ハイパーネットに東京地裁が自己破産を宣告。負債総額約37億円
1998年 1月23日 板倉雄一郎に東京地裁が自己破産を宣告。負債総額約26億円
5月11日 第一回債権者集会が東京地裁で開催
債権者の債務届出総額59億6400万円

失敗の本なので、当然ながら「あー、この人ここがダメだったんだな」と、学ぶ本だと思います。でも、僕自身はそんな風には全く思えず、「優秀な方だな」と思ってしまった。副社長には元ドコモ執行役員の夏野さんもいた。

起業家としての素質があり、周りを固める優秀な方々もいた。アイデアも優れていたように思える。でも倒産。もちろん優秀な方々だからこそナスダック上場の話があり、20億以上の資金を集めることができ、ビル・ゲイツからも声がかかった。なんか本当にビジネスは難しいな・・・と、気が重くなりました。あの夏野さんが家賃払えないなんて・・・。

失敗の主な原因は「社内コミュニケーション」「ファイナンス(対個人、対企業のコミュニケーション)」「時代の流れ」といったところだろうか。でも、本当にこれが明確な原因かは難しい。

人や金が一気に引いていく状況も本当にリアルである。

自分自身に置き換えても、今はチャンスを貰えていたとしても、失敗したら評価は180°変わるだろう。失敗した額が大きければ大きい程、「アイツはダメだ」ときっと思われる。信用を無くす。恐い。でも、それがビジネスだし、結果だから仕方が無い。結果を出すしかない。

文中にはソフトバンクの孫さんや、GMOの熊谷さんも実名で登場する。ビル・ゲイツの素っぽい雰囲気も実におもしろい。「銀行の頭取のアポを1回キャンセルしたら、もう連絡が取れなくなる」とか、そんなことあるのかと普通に思ってしまった。しかも、手書きの手紙でしっかり謝罪しているにも関わらずである。

プライベートの車や、女遊びの話もチラホラ出ているので親近感も覚える。ちなみに、この多少派手なプライベートが失敗の原因だとは僕は思わない。

そして、実は本を読んでいて、僕の中では某ソーシャルゲーム関連会社2社が思い浮かんだ。その会社がどうなるかは分からないが(売上規模的に全然良好なので大丈夫な気もするが)、なんだか色々考えさせられる。

ソフトバンク、楽天、サイバーエージェント、GMO。長年生き残っている会社は本当に凄いなぁと思う。

「古い本」という印象は全く受けず、一気に読める本なのでオススメです。


社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

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