2013
05/22

会社のために全力で新規事業を立ち上げようとしたけど失敗したプロデューサーのお話

約8年前の就職活動中に「渋谷ではたらく社長の告白」を読んで、「俺もこんな風になりたい。絶対起業してやる」と思っていた。

でも当時の僕にはそんな勇気も実力も無く、普通に大きい会社に就職した。

初めて1人暮らしを開始した部屋の壁には「20代で年収1,000万」というよく分からない貼り紙をした。貼り紙の内容とは違うけれど、僕の目標は「入社して3年以内に自分の企画したサービスを立ち上げる」と明確だった。

入社してからも頻繁にそのワードを社内に伝え、1~2年目は与えられた仕事を必死にこなした。体育会系の会社ではなかったため、終電近くまで毎日働いていた僕は、部署の中では1番帰りが遅かった。

「早く帰れ」と、頻繁に注意されたが、仕事が楽しくて楽しくて仕方がなかった。今思うとたいした売上貢献にはなっていなかったが、当時担当していたデジタルコンテンツのダウンロード数を1つでも上げようと努力した。ゲーム感覚でやっていたんだと思う。本当に仕事がおもしろかったし、頑張っている自分も好きだった。

そして遂に目標としていた3年目がやってきた。記憶はあいまいだが、新規事業の企画書をせこせこと作っていたのは覚えている。それに気が付いた隣の部署のエース(僕は社内で1番の天才だと思っている)が、僕の上司に助言してくれたのであろう。上司から「全員、新規事業案を出せ」という指示が出た。

こんなことを言うとナルシストみたいだが、お目当ては僕の企画で、他の人のは当て馬だった。結果、僕の企画を具体的に進めることになった。

僕は嬉しくて嬉しくてルンルン気分で新規事業を進めた。立ち上げなんてやったことなかった。それでも自分でシステム開発会社を探して、自分でコンテンツ制作会社を探して、自分で仕様書を書いた。誰も教えてくれなかったので、分からないことは外注先の人に「知識不足で大変申し訳ないのですが、これはどういうことでしょうか」と、何度も聞いた。

「大変だなぁ・・・」と思ってはいたが、自分の企画したサービスをヒットさせる自信があったし、何より少しずつ具体的になっていくのが嬉しかった。同期を中心に、社内への「どんなもんだ」という思いが少なからずあったような気もする。

しかし、途中から問題が起こった。僕の企画(というか事業)に役員(決裁者)が難色を示し始めた。「サービスの企画」というよりは、市場規模や事業計画、ビジネスモデル自体に疑問を持ち始めたのだ。

僕は一生懸命説明したが、実力不足で上手く伝わらなかったし、今思うと僕の考えも一部間違っていた。

特に苦戦したのは数字の作り方だった。これまでサービスの運用(ディレクター)のみ行っていいたため、事業計画表作成や上場企業の稟議書作成(固い会社だったため、本当に色々な資料を提出する必要があった)は一切やったことがなかったのだ。

やったことが無いのだから、できないのは当然だった。でも上司に「自分でやりなさい」「自分で立ち上げたいと言ったんでしょ?」と怒られまくった。本当に何度も怒られた気がする。

僕は基本的にテンションが低く、ぼーっとしているのだが、その時初めて「なんでそんな怒ってんすか?」と上司に口答えしたのを覚えている。

当時の会社で問題だったのは「新規事業を立ち上げた人がいない」ことだった。大昔に一発あてたサービスが未だに高収益を上げていて、最近事業を立ち上げた人がいなかったのだ。隣の部署のエース(天才)が唯一、0から立ち上げて○○億円の売上を作っていたが、僕の部署には立ち上げ経験のある人はいなかった。

誰も分からないから、みんな不安だったのだと思う。もちろん僕が生意気だったために、助けようとしてくれる人が少なかったのも原因にあるかも知れない。ただただ上司に「こんなんじゃダメだ」「自分で言い出したんだから、自分でやりなさい」と、怒られた。

楽しかった新規事業はただの苦痛に変わっていく。「会社は新たな収益の柱を立ち上げないといけない状況で、俺は誰に言われたわけでもなく、自ら手を上げて会社のために一生懸命新規事業を立ち上げようとしている。おそらく社内で最年少(平均年齢30代後半の会社)での事業立ち上げに挑戦している。にも関わらず何でこんなに怒られてるんだ。指示されたことをやっているだけのメンバーより100倍も頑張っているのになんで・・・」と。

辛かったのは間違いなかったけど、当時の感情としては「わけがわからなくなってきた」という表現が正しいのかも知れない。

僕の企画したサービスは上司の手によって少しずつ変えられていった。途中から「もう僕のサービスじゃないな」と思った。自分で責任の取れる、納得のいく企画ではなくなっていた。

企画開始から数ヶ月たって、「正式にこの事業のストップが決まりました」と僕の机にメモが置いてあった。

僕の挑戦は正式に失敗に終わったのだ。悔しいというよりはホッとした気持だったのを今でも覚えている。

実際は、そのあとにプラットフォームやシステム開発会社、コンテンツ開発会社にお詫びの連絡をする仕事が残っていた。本当に辛かった。立ち上げ確実とされていた内容が無しになってしまって、申し訳ない気持ちで一杯だった。外注予定先の方々には本当に本当にお世話になった。

結果論なのかもしれないが、僕が参入しようとしていた事業の市場規模は、当時月商数百万円だったのが1~2年後に数億円にまで拡大した。上位の提供会社は上場するまでになった。

「ほらみろ」と言いたい訳ではなく、色々と反省している。

【自身の力不足】
市場を読み取る力やセンスはあったかも知れない。でも社内調整力や、事業計画表の作成能力、経営視点など、諸々足りてなかった。僕の企画のままリリースしてても確かに失敗していたと思う。僕に実力があったら、もう少し理想的な企画書(その他諸々)を作成し、決済を通し、イマイチな元々の企画に改良を加えてヒットに導いていたと思う。力が足りなかった。

【上司やチームメンバーのミス】
上司のマネジメントは今考えても間違っていたと思う。本来は僕より経験のある先輩社員のをサポートに付けるべきだった。本来僕を守る立場の直属の上司が、更に上の上司側に回って一緒に怒ってしまい、1番やってはいけないパターンだったと今でも思っている。そして、周りの先輩社員も指示がなかったとしても自主的にサポートすべきだったと思う(理想は自ら上司へサポートを申し出る)。ちなみに隣の部署のエースは、部署が違ったにも関わらず、夜な夜な僕の力になってくれた。本当に感謝しているし、何より嬉しかった。

【役員(決裁者)のミス】
結果的に参入しなかったのは失敗だったと思う。企画書がショボかったとしても、当時入っていたら改良に改良を重ねて何とかなった。それくらい最高のタイミングだった。キャッシュがある会社だったので、数千万程度失敗したとしても、僕への教育費だと思ってやらせるべきだったと思う。 (当然、可能性のある市場だからこそ言えること)

 

と、まぁ他人の要因も書いてしまったが、僕の力不足が主要因だったので本当にもったいなかったと反省している。でも、当時は本当に意味が分からなくて会社を辞めようかと思った。「こんなにも新規事業が立ち上がりにくい会社はクソだ」と。

新規事業に全力を注いでいた僕は突然ヒマになった。元々担当していた仕事(サービス)は他人に引き継いでしまっていたため無かった。あまり記憶にないが、2ヶ月程毎日定時に帰っていたと思う。元アシスタントに「いつも遅くまでいるサイプロさんが毎日定時に帰るなんて変ですね」と、言われ「仕事ないから(笑)」と変な返答をしていた気がする。

まぁ、そんなこんなで初めての新規事業立ち上げ(挑戦)はキツかった。

ちなみに僕は翌年復活し、目標から1年遅れで自分の企画した(新たな)サービスを立ち上げた。前回のありとあらゆる反省を存分に活かした。信頼できて、僕の意見を尊重してくれる先輩社員のパートナーもできた。事業自体の売上も億単位まで伸びて、まぁ良かったんじゃないかなと思う。本当はもうちょっと伸ばしたかったけど。

二度目の立ち上げ中の後悔は、当時大好きだった彼女に、スーパーミラクルハイパー立ち上げを頑張っていた最中にフラれてしまったことだ。マジでショックすぎて、サービス開始直前(正念場)にも関わらず会社を3日休んだ。ゴハンが食べれなくなってマジで死ぬかと思った。

その後、次々と新規事業の立ち上げに挑戦した。数か月前に会社を移り、今また立ち上げに挑戦しようとしている。僕はまだまだ未熟で、また色々と失敗してしまうかも知れないけれど、自分を過信せず、色々な方の力を借りて現在の夢である「自分の企画で超大ヒットサービスを作る」を達成したいと思っている。

書き終わって「何が言いたいのか分からない」ことに気が付いたけど、きっと「会社のために、自ら険しい道を選んで頑張っているのに怒られて辛い・・・」と思うこともたくさんあるけど、後から良い経験だったって思えるよってことだと思う。

でも、また辛かったら嫌だなぁ。。。


渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫)

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