2012
04/12

instagramに800億の価値はなく、facebookの買収理由は競合リスクを潰すため


ニュースとしての記事はそこらじゅうに出回っており、俺が改めて普通の記事を書いてもつまらないので、WEBサービスの現場で働く人間として少し考察してみた。

念のため記載するとニュースの大元はコチラ。

米Facebookは4月9日(現地時間)、モバイル向け写真サービスを提供する米Instagramを買収することで同社と合意したと発表した。
買収金額はおよそ10億ドルで、現金とFacebook株の組み合わせで支払う。
順調に進めば、6月末までに買収手続きが完了する見通し。

買収金額800億円(10億ドル)。
まさにアメリカンドリーム。

■instagramってどんな会社

800億円で買収される会社ってどんな会社なんでしょうか。
実は結構ハチャメチャで

設立:設立2年未満
社員:13人
事業:写真共有アプリinstagramのみ
売上:0円

どう思う?

俺自身もinstagramは利用していて、とっても素敵なサービスだとは思う。
ただ、設立2年で従業員13人しかいなく、売上0円の会社が800億だよ!?

■instagram(サービス)に800億の価値はない

通常M&Aを行う場合会社の価値を算出します。
もちろん現状の価値ではなく、期待値として将来的に稼げる金額を算出します。

instagramの会員数は3,000万人。

これがどのくらい凄いのかというと
facebook:8.5億人
mixi  :2,623万人
GREE :2,641万人(国内会員数)、世界だと1.3億
mobage :3,500万人(国内)

そう、GREEとmobageの国内会員数くらい。
ちなみに売上(経常)も出してみると

facebook:3,200億円(800億)
mixi  :170億(34億)
GREE :640億(320億)
mobage :1,100億(560億)
となっている。

再度言うがinstagramの会員数は3,000万人。売上はゼロだ。

もちろん将来的に伸びる可能性はある。
ただ、instagramが売上を上げるとしたら
・広告掲載
・カメラの画像加工の一部を個別課金で販売
と言った程度になる。

これまでのapp storeのトップセールスランキングを見る限り、カメラの個別課金でそこまで収益が上がるとは考えにくい。

となると広告収益となってくるのだが、これも800億の利益を上げるのはおそらく厳しい。

理由①
写真加工して他のSNS(facebook)等にアップロード利用しているユーザーが多いと思われ、instagram自体のPVは少ないと思われる。
更にfacebookやmixiのように第2階層のようなページが少なく、広告枠を大量に作ることも難しい。(PV数と広告枠の数が売上につながる)

理由②
GREEやmobageの売上の大部分はアイテム課金の売上で広告売上の比率は低い。

実際mixiは広告収入メインの運営を行ったため、売上規模としては出遅れ感が高い。
サービスとして売上が見込めないのであれば、人材(技術)を買うというパターンもある。

■instagramの人材(技術的)価値も少ない

上記の「800億の価値はない」部分で、「facebookの売上が3,200億もある。そこと連動してシナジーを出せば800億くらいスグ回収できるじゃないか。」と考える人も多いだろう。

これは確かにそうだ。
すでに数億人のユーザーがいるfacebookにinstagramの機能を付加し、その分PVや利用者が増えれば800億回収することは可能だ。
(ザッカーバーグはfacebookとinstagramは統合しないと言ってるが)

だが、ここも疑問が残る。
「facebookがinstagramを作れないのか」という点。

実際、instagramは技術的に難しくない。
社員13人の会社が作れて、天才マーク・ザッカーバーグ率いる3,200人のfacebook社員が作れないとは到底思えない。

制作コストも1億円あれば充分作れるだろう。
優秀な人材確保といっても、13人で800億はいくらなんでも高すぎる。

もし、俺がやるなら
・1億円で開発
・750億でプロモーション
・49億でインフラ、機能強化、人材確保
を行うと思う。

750億円プロモーションに使うとしたら、CPA(1人あたりの獲得単価)が1,000円だったとしても、7,500万人を獲得することができて、instagramのユーザー数3,000万人を超えることになる。
(実際、無料アプリのCPAはもっと安いので、2億人くらいになる可能性もある)

なので、
自社開発 + 広告投入
の方が圧倒的に効果的だ。

いかにinstagramがブランド力があったにしても、750億も広告出向したら抜けると思う。

そもそもfacebookもブランド力はあるので、「facebookカメラ」というブランドでも負けないと思う。

では何故800億の大金を投入して買収したのか。
ちょっとひねくれた考え方をしてみた。

■instagramがドライブをかけて競合になる可能性

日本にいて肌感覚で十分感じることは、facebookが一気に浸透したことにより、mixiが過疎ってしまったこと。

これを頭に入れて考えて欲しい。
現状会員数3,000万人、売上0のinstagramはfacebookの脅威ではない。

ただ注目するポイントが2つある
・facebookが買収する直前の4月頭に40億(5,000万ドル)資金調達との報道
・Google、Yahoo!が興味を持っていたとの報道

俺が40億の資金調達した、instagramの経営者だったらどうするか。

40億も調達して何に使うの?と思うのが普通だが、おそらくコミュニケーション機能の拡張(現状のinstagramは機能が少ない)を行い、twitterレベルの機能を実装すると思う。
更に、プロモーションを数十億規模で展開し、ユーザーを一気に増やす。

おそらくGoogleが買収したとしても同じことを行うだろう。
むしろGoogleなら40億規模の投資ではなく、それこそ数百億の資金投入だと思う。

大量の資金を投入して、レバレッジ(広告)をかけることでシェアは一気に広がる。
これはfacebookにとってユーザーを奪われる可能性が高く非常に脅威だ。
googleが買収したら、ユーザー数は一気に数億人規模になるだろう。

そのリスクを800億(facebookたった1年分の利益)で排除することができる。
他に奪われるくらいなら今のうちに味方につけた方が良い
そう思ったのではないだろうか。

それが自分なりの考察です。
(あくまで仮説なので天才ザッカーバーグはもっと凄いこと考えてるかもしれません)

余談:ちなみに自分ならinstagramではなく、GREEやmobageを買う

GREEやmobageは時価総額は3,000~4,000億くらいなので、800億じゃ買えないですが、

  • ゲームで課金させる素晴らしい技術がある
  • すでに高い売上、利益率がある

ことを考えるとfacebookが吸収したらシナジーは凄いと思います。
(GREEやmobageのgameはZyngaよりクオリティが高い)

GREEやmobageは本当に世界で戦える力を持っていて、ソーシャルゲームとして世界No.1を取れるところまで来ている。
電気メーカーや自動車メーカーが苦戦する中、日本にはもうソーシャルゲームしかないと思う。

GREEやmobageを批判する人は凄く多いけど、やってみると本当に色々考えて作られている。
日本政府含めて、色々規制するんじゃなくて、国としてバックアップして(韓国のサムスンのように)成長させるべきだと思う。
内容よく分からず、アホな老人政治家が規制しようとしてるのは愚かだと思う。

WEBサービス業界で働く1人の人間として、日本が世界No.1を取れるとこまできている現状を大切にして欲しいなと思います。

人気記事

    None Found

経済ログ最新記事


Warning: array_slice() expects parameter 1 to be array, null given in /home/users/2/lolipop.jp-964f40ad7b48918/web/wp-content/themes/twentyeleven/content-single.php on line 175
  • No items

コメント

comments